COLUMNコラム
空き家の増加に伴い、防災面や防犯面などの観点から頭を悩ませている自治体も増えています。適切な対策により、空き家を活用できるだけでなく、移住者を増やしたり地域住民の交流を促したりすることが可能です。
本記事では、空き家対策の成功例を取り上げ、空き家の具体的な活用方法について紹介します。空き家対策を検討している、もしくはすでに取り組みを始めている自治体担当者様は、ぜひ参考にしてください。
空き家問題は、特定の自治体のみならず日本全体で問題視されているトピックです。そこで、まずは日本の空き家問題の現状を分析し、自治体においては具体的にどのような課題を抱えているのか解説します。
日本全体でどのくらいの住宅が空き家になっているのでしょうか。総務省統計局が行っている住宅・土地統計調査の結果に基づいて紹介します。
住宅・土地統計調査は、昭和23年から5年おきに実施されており、住宅・土地の現状や推移などを全国および地域別に明らかにする調査です。平成30年に実施された本調査によると、日本全国の空き家の総数は848万9千戸で、調査開始以来、最多の結果になりました。この数は、全国の住宅の13.6%もの割合を占めています。
統計局は、これほどまでに空き家が増えた背景には少子高齢化や人口移動などがあるとしています。今後ますます少子高齢化が進むと、さらに空き家が増えていく可能性があるでしょう。
この現状を踏まえ、多くの自治体では、独自に空き家対策を講じています。
令和3年から4年にかけて三菱UFJリサーチ&コンサルティングが全国空き家対策推進協議会会員のうち市区町村会員を対象に行った調査によると、「空き家の利活用の取り組みを行っている」と回答した割合は82.0%となっています。そのうち、空き家対策を移住・定住の取り組みとして行っている自治体が86.2%と最多となり、空き家の居住者を見つける動きが活発化していることがわかります。
空き家が増加することで、自治体にとってどのような問題が生まれるのでしょうか。具体的には「防災面」「防犯面」「衛生面」などが挙げられます。
たとえば、空き家は適切な管理ができていないため老朽化が進み、地震の際に倒壊・損壊の危険性が高まります。配線も老朽化していき、漏電による火災を引き起こすリスクもあるでしょう。また、空き家に残された金品を窃盗したり、住む場所のない人が無断で住みついたりするなど、犯罪の温床になる事案もあるようです。
さらに、ゴミが不法投棄されたり、野良猫や野生動物の棲み家になったりするといった、衛生上の問題にもつながります。倒壊した空き家や不衛生な空き家が増えることで、街の景観が損なわれる可能性もあるでしょう。
このように、空き家を放置することは自治体にとってデメリットが多いため、空き家対策に乗り出す自治体が増えているのです。
移住・定住用の物件として空き家を提供する自治体が多いですが、ほかにも空き家対策にはさまざまな方法があります。そこで、空き家活用のパターンと成功例を紹介します。
取り組んでいる自治体が最も多いのが、移住者向けの住宅支援として空き家を提供しているパターンです。
自治体のWebサイトなどで空き家情報を掲載する「空き家バンク」という仕組みを活用し、その自治体への移住・定住を希望する人へ情報を提供します。空き家への居住を希望する移住者に対してリフォーム費用などの金銭的な支援を行っている自治体もあります。
たとえば岩手県遠野市は、移住・定住の希望者向けWebサイト「で・くらす遠野」で空き家バンクのコーナーを設けています。同市は観光やグリーンツーリズムをきっかけに興味をもってもらい、短期滞在、長期滞在を経て、定住につなげるという段階的な施策を行っています。定住先である住宅については、空き家バンクを活用して情報を発信しています。
アトリエやカフェなどが移転する際に、移転先として空き家を提供している自治体もあります。岡山県瀬戸内市では、ガラス工芸作家がアトリエ兼住居として空き家に入居し、将来的には隣り合っているもう一軒をギャラリーとすることを検討しているようです。また、近隣の市で人気のカフェが前物件の賃貸契約解消をきっかけにして、瀬戸内市の空き家へ移転した事例もあります。空き家のよさを活かした古民家カフェとして人気となっており、空き家所有者も空き家への移転者も満足している事例です。
空き家を改修・改装し、コワーキングスペースやレンタルオフィスとして貸し出している成功例もあります。リモートワークが普及している現代のニーズとマッチした空き家対策といえます。
神奈川県小田原市では、旧片浦支所をワーケーション施設「U(ユー)」としてよみがえらせました。もともとは昭和28年に建てられた旧片浦村の役場で、昭和29年の小田原市との合併により小田原市の支所となったものの、平成31年3月から空き家となっていた物件です。リニューアル工事によって、レトロさを残しつつ、広い机と座り心地のよい椅子を配置して仕事をしやすい空間になりました。
空き家が宿泊体験施設へと生まれ変わった成功例もあります。観光客が宿泊してくれることでその街に興味をもち、移住・定住の輪が広がるきっかけとなるでしょう。
古き良き風情ある古川の街並みで有名な岐阜県飛騨市には、空き家対策の支援を受けて古民家をリフォームした宿泊体験施設があります。もともと民家であったため居住性に長けていて、快適に滞在できる施設です。
空き家対策の一環として、地域の住民が集まるコミュニティ施設や文化施設として空き家を改修・改装して活用している自治体の例もあります。
山梨県都留市にある富士見台自治会は、空き家を活用して世代間交流施設「富士見台ふれあい館」を作りました。広間や会議室などを作り、自治会事業や敬老会事業などを行っています。
また大阪府吹田市では、寄付された歴史的古民家を改修して吹田歴史文化まちづくりセンター「浜屋敷」を設立しました。だんじりを展示したり吹田市に関する資料を展示したりするなど、地域の歴史・文化を伝えていく施設として活用されています。
TSP太陽株式会社は、自治体が直面する空き家問題に対し、空き家・空きスペースの活用をご提案しています。具体的な活用事例を2例紹介します。
兵庫県洲本市にある赤レンガ建物を改修した「S BRICK」は、TSP太陽がお手伝いさせていただいた事例の1つです。食事ができるエリア、子どもが遊べるエリア、クラフトエリア、コワーキングスペースを作り、市民も観光客も楽しめる複合施設へと生まれ変わらせました。当社は、全体設計や申請関係の取りまとめ、施工管理から引き渡しまで、トータルで携わっています。
洲本市の多目的スペース「アルチザンスクエア」に多目的スペースを設置するため、TSP太陽株式会社は施設内部の改修などを行いました。もともと市民工房として活用していたスペースが市民工房の移転に伴い空きスペースとなったことで、当社が多目的スペースとしての活用をご提案しました。
空き家は年々増加傾向にあり、防災や防犯などの観点からも空き家は自治体にとって大きな問題となっています。そのような中でも各自治体は試行錯誤し、移住・定住者向けの住宅や宿泊施設、コミュニティ施設など独自の方法で空き家対策を講じています。
しかし「空き家対策の具体的な進め方に悩んでいる」「最適な空き家対策の方法がわからない」などの不安・悩みがあり、空き家対策に踏み出せていない自治体もあるでしょう。そんなときは、空き家対策の実績があるTSP太陽株式会社にご相談ください。ご提案から設計、施工までトータルでサポートさせていただきます。