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COLUMNコラム

空間演出の最新事情と体験を変える「イベントアーキテクチャ」の事例

本コラムでは、仮設建築市場の規模、拡大要因について触れながら、空間演出における「イベントアーキテクチャ」の可能性についてお話します。

近年、「空間演出」という言葉が、イベントやプロモーションの分野で注目を集めています。単なる装飾や演出にとどまらず、空間そのものを価値ある体験として設計する考え方が、企業のマーケティング施策において重要視されるようになってきました。

その背景のひとつには、展示会やイベント、ポップアップ、屋外プロモーションなどで活用される仮設建築市場の拡大があります。
一時的に設置される空間であっても、ブランド価値を体現し、来場者の記憶に残す役割が強く求められる時代に入っています。

この記事では、以下の内容を紹介します。 

・仮設建築市場の現状と拡大の可能性

・イベントプロモーションにおける空間演出の効果

・TSP太陽の空間演出事例

仮設建築市場の現状と拡大の可能性

現状と市場拡大の要因

近年、空間設計・仮設建築の市場はグローバル規模で拡大傾向にあります。

代表的な指標として、展示会用ブース構築市場全体は2024年に約53.8億米ドル(日本円にして約8,462億円)の規模に達し、2030年には約82.7億米ドル(日本円にして、約1兆3,008億円)まで成長すると予測されています(年平均成長率: 約7.27%)。 これは企業が物理的な展示や体験型マーケティングに一層注力していることを反映しています。※1

また、モジュラー形式のブース市場も2023年時点で約25億米ドル(日本円にして、約5,033億円)に達し、2030年まで年平均成長率7.6%での拡大が見込まれています。企業は「スペースの有効活用」「柔軟性」「ブランド体験を高めるデザイン性」を重要視しており、この分野のニーズが高まっています。※2

これらのデータは、イベント・展示会におけるブランド体験への投資の拡大を示しており、空間演出・仮設建築市場が今後も成長を続ける分野であることを示しています。

※1市場調査レポート「Exhibition Stand Construction Services Market」 による調査
※2Verified Market Reports による調査

技術革新と新しい潮流

仮設建築業界では近年、機能性とデザイン性を高いレベルで両立させる技術革新が急速に進んでいます。
単なる「短期間の設営物」から、ブランド体験を支える空間装置へと役割が拡張している点が大きな特徴です。

代表的な例が、AIRCLADやモジュラー建築のような先進的な仮設建築ソリューションです。
これらは、部材を規格化・ユニット化することで、組立・解体の効率を大幅に高めるだけでなく、構造的な安定性や快適性、意匠性においても常設建築に近い品質を実現しています。

これらの先進的な仮設建築ソリューションは、

建築負担の軽減による人的リソース不足への対応

短工期での設営・撤去

再利用を前提とした循環型設計

といった点から、イベント業界が直面する運営負荷の軽減や環境配慮に寄与する技術として注目されています。

また、従来主流であった設備に加え、広告カスタマイズ性・デザイン性・柔軟な拡張性に優れた仮設建築プロダクトが増えたことで、空間そのものをブランドの世界観を表現するメディアとして設計することが可能になりました。

こうした技術の進化によって、仮設建築はもはや「一時的な設備」ではなく、来場者の感情や記憶に働きかけ、ブランド想起を形成するための空間メディアへと進化しています。

イベントプロモーションにおける空間演出の可能性は、これらの技術革新によって、今後さらに広がっていくといえるでしょう。

「イベントプロモーション」における空間演出の効果

建築的視点による空間演出の効果

イベントプロモーションにおいて、空間はブランドの思想や世界観を来場者に直接体感してもらえる、重要なメディアです。近年は、単なる装飾にとどまらず、没入感やフォトジェニックな空間全体を通じて、ブランドを深く理解してもらう体験設計が求められるようになっています。

こうした流れの中で注目されているのが、建築的な視点を取り入れた空間演出です。動線設計や規模感による印象、拡散ポイント、ブランドを表現する素材の選定といった要素を総合的に設計することで、来場者は情報を「見る」だけでなく、空間を通じてブランドを「感じる」体験を得られます。

このような空間演出は、来場者のブランド理解度を高めるだけでなく、会場内での滞在時間の増加に伴う深い製品体験、SNS・メディアを通じた二次的な拡散を生み出します。その結果、イベントは一過性の施策にとどまらず、継続的に価値を生むマーケティング資産として機能します。

実際に海外では、没入型の体験設計を取り入れたイベントが、従来型の展示と比べてSNS投稿数やブランド想起率を大きく向上させたという調査結果も報告されています。空間演出がマーケティング成果に直結することが、データの面からも示されています。

以下に、建築的視点を取り入れた海外ブランドの空間演出事例を紹介します。

【実例】Dior「ミス ディオール展」※3

・SNS投稿数: 50万件以上
・ブランド想起率: +28%向上
・ブランド印象: 「芸術的」「革新的」という評価が定着 

※3 Diorが展開する世界巡回型の体験施設。香りの歴史を建築的に表現し、視覚・嗅覚・触覚を通じてブランドの世界観を体験できる空間設計。Instagram投稿数推定50万件以上、ブランド想起率+28%向上を記録。 

TSP太陽が手掛ける空間演出

TSP太陽は、年間1,100件を超えるイベントの空間演出を手掛けてきました。
1922年の創業以来、イベントのコンサルティングから企画、デザイン、建築設計、運営までを一貫して担い、幅広い分野で実績を積み重ねています。

企業プロモーションをはじめ、遊休地の空間プロデュース、まちづくり、防災訓練、博覧会などの国際イベント、式典、スポーツイベントまで、その領域は多岐にわたります。

こうした豊富な経験を通じて培った知見をもとに、TSP太陽は単なる設営や演出にとどまらず、企業やブランドの価値を空間で伝えるというイベントアーキテクチャ思想の観点から、イベント全体の体験設計への取り組みを行っています。

ここでは、その取り組みの一端として、国内イベントにおける代表的な空間演出事例を2つご紹介します。

アイルランドパビリオン

パビリオンを上から見た平面形状は、アイルランドに古くから伝わる象徴的なモチーフである「トリスケル(三つの渦・三つの輪)」をモチーフにした、3つのリングが重なり合う構成となっています。建築そのものに文化的背景を落とし込むことで、空間に明確なストーリーとアイデンティティを与えています。

内部では、アイルランドのミュージシャンによるアイリッシュ音楽とダンスのパフォーマンスに加え、豊かな自然を感じさせる映像演出が展開されました。音楽・身体表現・映像がシンクロすることで、来場者は単に「展示を見る」のではなく、アイルランドの文化や自然を五感で体験できる空間となっています。

万博サウナ 『太陽のつぼみ』

大阪・関西万博という非日常的で特別な空間において、本サウナは一般的なサウナ施設とは異なる、「リチュアル(儀式)」としての体験を提供することを目的に設計されました。

建築は、最小限のアルミフレームとETFEフィルム※4、そして空気のみで構成されたテトラ形状ユニットによる、これまでにない膜建築です。軽量で透過性の高い構造により、光や熱、空気の変化を繊細に感じられる空間を実現しました。時間帯や天候といった外部環境の影響によって表情を変える建築そのものが、体験の一部として機能しています。

空間は、つぼみのように熱を包み込むサウナ棟、光に染まり風が抜けるラウンジ棟、そして開放的な水風呂棟という個性の異なる3棟で構成されています。それぞれが明確な役割を持ちながら連続することで、身体の移動そのものが体験のリズムを生み出し、豊かなサウナ体験へと導きます。

※4フッ素樹脂のなかでも特に透明度の高いETFEを使用したフィルム。耐候性や耐熱性・耐寒性など様々な面で優れた特徴を持つ。

まとめ

空間演出と仮設建築市場は、展示会やプロモーションなどイベントと密接に関連しながら、成長を続けています。

・展示会ブース構築市場は2024年に約53.8億米ドル(日本円にして約8,462億円)、2030年に約82.7億米ドル(日本円にして、約1兆3,008億円)まで拡大予測(CAGR約7.27%)。

・モジュール式展示ブース市場は年平均7.6%の成長率で拡大。

仮設建築市場の進化とともに、空間演出は単なる演出手法ではなく、イベントを継続的な価値創出につなげるマーケティング手段として、今後ますます企業のブランド戦略・プロモーション戦略に欠かせない存在となり、大きく成長していくと予想されます。

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