PROJECT実績紹介
TSP太陽が運営を担う、エプソン チームラボボーダレス
『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』
(2024年2月9日~常設、麻布台ヒルズ)
『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』(以下、エプソン チームラボボーダレス)の運営業務を担っている当社が、森ビル様、チームラボ様とともに取り組む、よりよい職場づくりについて語る。
エプソン チームラボボーダレスでは約330人のアルバイトスタッフが働いている(2026年1月現在)。平均年齢は27歳。エントランス、作品展示、ティーハウス(EN TEA HOUSE – 幻花亭)、コールセンターの4セクションに分かれており、それぞれディレクターと呼ばれる責任者を配置して統率を取っている。

エントランス

ティーハウス EN TEA HOUSE - 幻花亭 チームラボ《小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々》©チームラボ

作品展示
ただ業務をこなすのではなく、目的をもって働いてほしい。そんなスタンスで、当社はアルバイトスタッフと向き合っている。 背景には、開業前にチームラボ様から伺ったある話が関係している。
欧米では、美術は貴族や王族といった“特定の視点”を重視して発展してきた。対してアジアでは、上座下座の考え方はありつつも、どの立ち位置からでも空間を楽しめる“没入感”が大切にされてきた。この没入感は美術のみならず、日本のゲーム文化など、さまざまな表現分野にも受け継がれているのだという。
チームラボ様から学んだアジア美術・文化の考え方は、アルバイトスタッフの入社時に必ず伝えるようにしている。「ミュージアム内の作品だけでなく、美術や文化そのものにも興味を持ってほしい」という思いは徐々に浸透し、 作品に携わることの楽しさを感じるスタッフが増えている。「働きながら学べる職場」へと育ち、スタッフ間のコミュニケーションが深まったことで、離職率の低下にもつながっている。
エプソン チームラボボーダレスの大きな特徴は、海外から来場されるお客様が非常に多いということだ。スタッフサポートを担う当社のプロデュース事業部 スタッフセンターの小泉は、「正直予想以上でしたね。インバウンドの増加により、海外の旅行サイトやSNSを通じて知名度が高まっているようです。現場運営においても英語での対応力が求められました」と話す。

平日の日中も多くの人で賑わう


そこで、開業当初3割前後にとどまっていたスタッフの英語話者比率を向上。外国人スタッフ採用も積極的に進めた結果、1年後には英語話者比率を8割以上にまで引き上げることに成功した。「ただし面接の際は、日本語の能力も同時に厳しくチェックしています。来場者への対応水準を守るのはもちろんのこと、スタッフ間でコミュニケーションがうまくとれるかどうかは、職場の働きやすさにも関わりますから」。(小泉)
また、カスタマーハラスメント対策にも注力。クレームがあった場合はアルバイトスタッフではなくすぐに責任者が対応するよう徹底しているほか、対応に明確な基準を定めることで、スタッフを守る体制を整えている。
ほかにも、来場者から寄せられたお褒めの言葉をバックヤードに掲示してスタッフの士気を高めたり、ご意見があった際にはスタッフ同士で話し合う時間を設け、改善に向けて協力して取り組んだりと、よりよい職場づくりのための工夫を積み重ねている。
スタッフ一人ひとりが作品や文化への理解を深め、言語力や対応力を備えたうえで自信を持って接客できる環境が整ったことで、来場者の満足度も向上。こうした積み重ねが、森ビル様・チームラボ様にもご評価いただける運営品質につながり、ミュージアム全体の魅力や施設価値を高める結果につながっている。
日々の現場改善と職場づくりは、ミュージアムの価値を高める重要な原動力となっているのだ。

現場の改革と並行し、TSP太陽の社内でも大きな動きがあった。その一つが新規部署の立ち上げだ。エプソン チームラボボーダレスの運営受注を機に、イベント現場で働く人材の雇用関連業務を取りまとめる部署として「スタッフセンター」が立ち上がった。同部内でエプソン チームラボボーダレスのスタッフサポートを担う小泉は、週2~3日は現場に足を運び、採用面接やスタッフとの定期面談、雇用契約の確認などを行っている。
「スタッフと面談していると、十人十色の人生があるんだなぁと実感します。ただ働いてもらうのではなく、その人にとって、施設にとって、どうしたらより良く働けるかを意識しながら一人ひとりと向き合っています」。性格や強み、スタッフ同士の相性などを見極め、時には思い切った配置換えを提案したことも。その結果、個性をさらに生かしながら働けるようになったケースもあるという。

『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』麻布台ヒルズ, 東京 © チームラボ
小泉は語る。「施設運営では“安定した運営ができているか”に目が行ってしまい、スタッフのモチベーションは二の次になりがち。せっかく“働いてみたい!”と思ってくれたのだから、一人ひとりのバックグラウンドやどんなことを叶えたいのかにまで目を向けて、どの人の思いも実現していきたいという思いで接しています。やりがいを感じながら楽しく働いていただけたなら、その気持ちは来場者の方にも伝わるはずですから」。
エプソン チームラボボーダレスでは光を用いてアートを描き出しているため、ミュージアム内の多くの場所で照明を落としている。これは「来場者のアート体験を最大化したい」という、チームラボ様の想いによるもの。一方で、ミュージアムがある麻布台ヒルズを運営する森ビル様は、施設自体が安全であるかどうかを重要視されている。「アートとしての完成度」を守りながら「施設運営としての安全性」を担保するために、当社は2社の想いを汲み取りながら最適な運営提案をしている。
毎月実施している防災訓練の目的設定・シチュエーション提案もその一つ。有事の際にはスタッフが指揮を執り、多数かつ多様な来場者を薄暗い施設内から安全に避難させなければならない。そこで、80~100名規模でスタッフ役、お客様役を配置して、実際の動線を再現した訓練を毎月行っている。

スタッフとのコミュニケーションを欠かさない蔵野(右)

スタッフとのコミュニケーションを欠かさない蔵野(右)
当社でエプソン チームラボボーダレスの運営全般を統括しているプロデュース事業部 スタッフセンターの蔵野は、手応えをつかんでいる。「先日、森ビル様から避難誘導に関して『安心できますね』『特に現場責任者であるマネージャーの成長がすばらしい』と高い評価をいただきました。日頃の訓練はもちろんのこと、現場目線での提案が評価された結果だと、嬉しくなりましたね」。当社がこれまでイベント現場で培ってきた「臨機応変な対応力」「現場に寄り添った提案」が、常設施設の運営でも大いに活きている証拠の一つだ。
こうした防災訓練や救護対応訓練を定期的に行っているほか、朝礼で防災に関わる情報のレクチャーの時間を設けたりすることで、スタッフの安全意識が向上。来場者に安心・安全にお楽しみいただくための教育機会は、職場の信頼感醸成に良い影響をもたらしている。
また、日本全体で労働人口の減少が続くなかで、「イベント会社が常設施設の運営を担うことは業界全体にメリットがある」と蔵野は展望を語る。 「イベント現場でも人材確保のハードルは年々高くなっています。人材の手配が受けられず、イベントが開催できなくなるという最悪の事態も考えられるでしょう。その点、常設展示の運営を通じて自社スタッフを安定的に抱えることで、外部依存リスクを下げることができます。それに、当社は年間で約1,100件、多種多様なイベントに携わっています。将来的に、英語話者や経験豊富なスタッフなど、スキルや適性を把握している自社人材をイベント内容に応じて柔軟に配置できるようになったなら、イベントでの体験価値そのものを向上させられるのではないでしょうか」。
当社が展開する常設運営事業では、一つの型にとらわれず、施設それぞれに異なる運営方針・特性によって姿を変え、あらゆる状況に対応できる集団を目指している。「今後も多種多様な常設施設の運営を受注し、どのジャンル・どの現場においても柔軟に対応できるまでに事業を拡大していきたいですね」(蔵野)。