PROJECT実績紹介
和歌山県白浜町と「地域活性化起業人」協定を締結
和歌山県白浜町と「地域活性化起業人」協定を締結
2025年5月30日、TSP太陽は総務省が推進する「地域活性化起業人」の制度を活用し、和歌山県白浜町と協定を締結した。この制度は、都市部の民間企業などの社員が、自身の専門的なノウハウや知見を活かして、地域課題の解決や地域活性化に取り組むものだ。
当社のプロデュース事業部に所属する社員・琴塚恭子は、白浜町の「地域活性化起業人」として自治体と連携しながら、情報発信やイベント企画などを通じて町の課題解決に取り組んでいる。
イベントをきっかけとした地域との関わりにとどまらず、社員が地域に暮らしながら自治体と伴走し、課題解決に取り組む。これはTSP太陽としても初めての挑戦だ。
琴塚は「白浜町の面白さをわかってなかったですよね」と、意外なことを口にした。彼女が白浜町と関わることになったのは2018年頃のこと。白浜町にある「アドベンチャーワールド」を中心としたイベント企画を担当することになり、初めて白浜町へ訪れた。関西出身のため白浜町自体は知っていたが、和歌山県にすら足を踏み入れたことがなかったという。



白浜町は、海だけではなく山や川のアクティビティも楽しめる自然豊かな町だ。日本の渚百選に選ばれた「白良浜(しららはま)」や日本三古湯である「白浜温泉」といった豊富な観光資源を持つ。だが、当時アドベンチャーワールドに関連するイベントの企画・推進で、多忙な日々を過ごす琴塚には白浜町の魅力を感じる余裕はなかった。
「一人で現場を必死にまわしてたので…」と苦笑い。TSP太陽の社員は部署によっては全国各地を飛び回り、プロジェクトの管理を一任されることになる。チームの場合もあるが、一人で現場に入ることも多い。
「現場とホテルを往復する毎日だったので現地で友達もできないですし、いい場所だとは思っていたものの、まさか住むことになるなんて、そのときは思ってもみなかったです」
この経験が、のちに人生を大きく変えることになる。


そんなふうに感じていたが、2020年には白浜町と東京の2拠点での生活が始まる。TSP太陽に入社する以前は、フリーのアートディレクターとして活躍していたこともある琴塚。当社が主催した「南紀白浜パンダバンブー EXPO.2020」では、アートディレクターとして培った経験と、TSP太陽でのイベントプロデュースの経験を活かし、企画立案から担当。コロナ禍のため、人が密集しないイベントの開催が求められた。
そのイベントの中でアドベンチャーワールドを中心に白浜町、観光協会や商工会を巻き込み、町ぐるみで盛り上げるイベントづくりを行った。単にイベントを実施するのではなく、地域の事業者や行政を巻き込みながら町全体の価値を高める。これは、TSP太陽がこれまで多くの地域活性プロジェクトで培ってきたノウハウでもある。


イベントの一環として行ったワークショップで、現在の夫と出会う。もともとは白浜町と東京を行き来する生活だったが、リモートワークの普及により白浜町に滞在しながら仕事をすることも増えつつあったため、白浜町で生活する時間が多くなった。


TSP太陽の一員としてイベントづくりに携わる一方、白浜町で活動する中で出会った、地域活性化起業人の企業と役場の担当者から声をかけられたことをきっかけに、会社からの後押しも受け、2025年には「白浜町地域活性化起業人」として活動をスタートした。その頃には白浜町の魅力を感じていた反面で、地域の意外な課題にも直面した。
白浜町は、年間約300万人以上の観光客が足を運ぶリゾート地でありながら「情報を十分に発信できていなかった」と琴塚は言う。そのために、note、Instagram、ラジオなど多様な媒体で情報発信に取り組むことにした。とはいえ、広報経験がない琴塚にとっては新たな挑戦だ。
「海が綺麗、温泉やテーマパークがある、そんなふうに遊べる場所という認知があるからこそ、もっと細かく打ち出していこう」と、あえて“中の人”が見えるような、人や暮らしが見える情報発信を心がけている。



「面白い場所ということを知ってほしくて、海の美しさや町で頑張っている人、おいしいごはんなど、白浜町にいるからこそ見える魅力を発信し続けています」
地域活性化起業人の立場を活かし、行政らしい堅さをあまり感じさせないからこそ、等身大の白浜町の魅力が伝わってくる。イベントは開催して終わりではない。地域の魅力を継続的に届け、人との接点を増やすことも地域活性化には欠かせない。そのため琴塚は、広報という新たな領域にも挑戦し、現在ではSNSの講師を担当するなど、活躍の場が広がっている。


一方で、観光資源が豊富で魅力のある地域だからこその地域の課題を肌で感じていた。
「白浜町は特急も停まりますし、空港もあるので、人里離れた田舎とはすこし毛色が違うと感じますね。利便性が高い一方で、地域のコミュニティに入り込むきっかけが少なく、孤独を感じやすい」と琴塚は振り返る。羽田空港から南紀白浜空港までは約1時間、そして観光客も多い地域のため、地域外の人もアクセスしやすい反面、地域の方が集まる場所がないと感じていた。
「地域の温かさを感じられる場所をつくりたい」。そんな思いから2026年6月に初開催したのが「Re:ラジオ体操 @JR白浜駅」だ。琴塚自身、かねてよりバーベキューやビーチクリーンなどを自主的に企画していたが、参加者から「町の人が集まる場所ってどこかわからなくて…」「最近移住してきたけど地域の方と交わる場所がない」といった声が寄せられていた。これは琴塚自身も感じていた壁だ。だからこそ、あえてSNSだけの告知ではなく、ポスター掲示や小・中学校でのチラシ配布などオフラインの告知をメインに、地元の方が集まるイベントを目指した。


初回ということもあり、50~60人程度の参加者を想定していたが、結果は倍以上の120人が駅前に集合。ラジオ体操のあとに行われた清掃活動に駆け付けた参加者もおり、大盛況となった。
「スタンプカードを100枚印刷してたんですが、ほとんど残らなくて、嬉しい誤算でした」
毎月第1土曜日に定期開催するこのイベントでは、駅周辺の清掃活動以外にも季節に合わせた催しが行われている。第1回が終了すると同時に、地元の飲食店から出店したいという申し出もあった。
「続けていくためには、この日にやるって決めちゃうことがすごく大事だと思ってて。『イベントは難しい、大変』と、先延ばしにされてしまいがちだからこそ、まずは開催できたことが私としては結構大きな一歩でした。これが10年続けばいいなと思ってます」
将来的には、地域の人が集まるマルシェへと発展させたいという構想も描いている。地域に入り込み、課題を見つけ、その解決策を企画し、実際のイベントとして形にし、さらに継続的な仕組みへ育てていく。この一連のプロセスこそ、TSP太陽が目指す地域プロデュースの姿だ。
地域に密着し、その中で琴塚が大切にしているのは「気軽にみんなが入れるような場所」であること。コミュニティを形成するのではなく、「参加しても、しなくても、誰も『ノー』と言わない空間」それが理想の場所だと語る。

琴塚自身、白浜町に拠点をおき、出産を経て、「白浜町地域活性化起業人」として働く中で、白浜町は自分が暮らしていきたい場所と思える地域になった。だからこそゆるく集まれる場所が不可欠と感じている。
「昔、ギリシャの海行った時に、年配のおばあちゃんたちが麦わら帽をかぶって、海の中に温泉みたいに浸かって普通におしゃべりしてるのを見かけたんです。私もそんなふうにこの町で過ごしたい。だから仲のいい人たちには『おばあちゃんになっても一緒に白浜の海入ろうな』って、言ってます」と琴塚は笑顔を見せた。


地域活性は、一度のイベントで終わるものではない。地域の魅力を掘り起こし、継続的に関わっていくからこそ、にぎわいを生み出すことができるのだ。地域に寄り添いながら課題を見つけ、企画・広報・イベント運営まで一貫して形にしていく。
イベントは目的ではなく、地域課題を解決するための手段。その前後にある課題発見や関係づくり、情報発信まで含めて伴走することが、TSP太陽のプロデュースである。こうしたTSP太陽ならではのプロデュース力が、白浜町での地域活性化にも生かされている。
白浜町を「全然面白くない」と思っていた琴塚が発見した町と人の魅力。そのワクワクは伝播し、きっとこれからも多くの人に白浜町の魅力を伝え、さらに地域を元気にしていくことだろう。